ギフティは2024年3月15日(金)、株式会社コロプラや株式会社サムザップ、株式会社スクウェア・エニックス、株式会社MIXI、Bushiroad International Pte. Ltd.など、著名企業のゲームプロデューサー・マーケターらを招き、座談会を開催。昨今のソーシャルゲーム業界で有効なファンマーケティングのポイントなどが語られました。
前編では、各企業の施策事例の共有セッションを、後編となる本記事では、「2023年のXを巡る変化」などを議題としたディスカッションの様子をまとめています。
※前編はこちらのページよりご覧ください。
2023年のXを巡る変化&新たに注目されるチャネル
イーロン・マスク氏のTwitter社(当時)買収後、APIの有料化やアルゴリズムの仕様変更など、さまざまな変化があったX。ソーシャルゲーム業界で特に大きな存在感があったことから、これらの変化がもたらした諸課題は無視できないものに。そこで森下氏は、Instagramや新しいSNSなど他のプラットフォーム活用の可能性も含め、議論を深めていきたいと語ります。
Bushiroad International Pte. Ltd. Head of Mobile 森下明氏
まず、コロプラの川合氏がスマートフォン向けゲーム『とらべる島のにゃんこ』で実施した友達紹介キャンペーンを例に、次のように話します。
株式会社コロプラ 『とらべる島のにゃんこ』ディレクター 川合規文氏
川合氏「今回はライトなゲームユーザーをターゲットに据えていたのと、グラフィックのデザインにもこだわっていたので、InstagramやLINEでも訴求はしましたが、ゲーム業界におけるユーザーとのタッチポイントの主戦場といえば、やはりXになることが多いのではないでしょうか」
一方、スクウェア・エニックスの村上氏はXに関して、以前から課題を感じていたといいます。
株式会社スクウェア・エニックス 第四開発事業本部 ディビジョン(Promotion) 村上亮真氏
村上氏は、イーロン・マスク氏のTwitter社(当時)買収後、Xの収益化が進む中で、特定ユーザーによるインプレッション目的のリプライが増えたと指摘。さらに、企業がキャンペーン投稿をしても、懸賞目的のアカウントが増え、本来ターゲットとしているユーザーからの反応は悪くなったとのことから「これらの問題は解決していかなければならない」と述べます。
ただし、こうした諸課題が露呈したことをポジティブに捉えることもできるといいます。
村上氏「これまでSNSキャンペーンは、『とりあえずやっておこう』と深く考えずに行われがちでしたが、そうした姿勢から脱却し、マーケティング戦略を再考する良い機会だと気づいたのです。
ナンバリングにもよりますが、FFシリーズのコアなユーザー層は30〜40代がメイン。彼らが日常的に触れる媒体をきちんと精査したら、もしかしたらそれはSNSではなく、業界誌やOOHかもしれない。そうした他の選択肢含め、マクロな視点で見直すことにしました」
続いて、MIXIの大槻氏が語ります。同社では、Xの将来性に対し不確定要素は拭えないことから、他の媒体でもアカウントを開設し、新たなキャンペーンチャネルになり得るかテストしているといいます。
株式会社MIXI コトダマン事業部 部長/プロデューサー 大槻一彦氏
大槻氏「いずれにせよ、Xが本当に使えなくなっても、既存ファンが互いにつながれる“場所”は用意しなくてはいけません。それは、例えばオウンドメディアでも良いし、はたまたメルマガでも良い。メルマガは多少、アナログな印象を受けるかもしれませんが、そうした過去の常套手段も掘り起こしていかなければならないでしょう」
転じて、サムザップでは、ファンとの交流の場に「Discord」を活用し始めた、と運上氏。Discordは、米国発の無料のコミュニケーションサービスで、テキストでのチャット機能の他、音声通話やビデオ通話、画面共有機能などが実装されています。
株式会社サムザップ マーケティング室/ファンマーケ 運上雅展氏
サムザップがDiscordを活用し始めた背景として、同社のグループ会社がDiscordを効果的に運用できている事例があるからでした。そこで現在、同グループ会社から従業員を派遣してもらい、そのエッセンスを学んでいるといいます。
マーケとプロダクト間の軋轢解消に向け、各社が取り組んでいること
座談会はクライマックスに達し、議論が白熱する中、議題はXから業界全体に共通する「マーケとプロダクト間で生じがちな軋轢」という普遍的なテーマに発展しました。
森下氏は、多くの企業でマーケティングとプロダクト部門間で摩擦が起きがちであること、さらにそれは現在に至るまで解決に至っていないと指摘します。
森下氏「かつてはマーケットが右肩上がりで成長していたので、内部の軋轢があっても売上は伸び、結果、あまり問題視されてこなかったと思います。しかし、今のシュリンクしている市場環境を鑑みると、マーケティングとプロダクトチーム双方がより協力し合えるよう、組織運営を改善していく必要がありそうです」
では、各企業の状況はどうでしょうか。登壇者は各々、自社の状況を語りました。
運上氏「サムザップのマーケティングとプロダクト部門間は比較的、友好的です。定期的にミーティングを設け、両チームの戦略を説明し合ったり、将来的に実装した方が良さそうな機能などを話し合ったりしています。このようなコミュニケーションの場を設けることが両部門の良好な関係構築につながっているのではないかと思います」
川合氏「コロプラでは、『商品を通じてユーザーにどのようなゲーム体験を提供できるか』という観点から、プロダクト・マーケ両部門が早期に認識を擦り合わせています。つまり、マーケティングと開発を早い段階から連携させ、体験性に則ったマーケティングを実施していくことが肝要ではないでしょうか」
大槻氏「なお、コトダマンでは『NSM(※)』という考え方を採用し、両チームで同じ指標を持っています」
※North Star Metricの略。ビジネス成長を目的とした指標設計のフレームワークで、Meta(Facebook)やUber、Dropboxといった有名企業で積極的に採用されている
確かに、両チームで同じ指標を持つことも軋轢解消には役立ちそうです。実際、コトダマンでは両チームで「ベースユーザー(BU)数」を目標値に据えているとのこと。そして、BU数を目標値に据えることで、新規・既存を問わず、ユーザーがどれだけ“定着”しているかが測れるのだそうです。これにより、マーケ側も、よくある「CPI」や「ROI」「新規ユーザー獲得数」だけでなく「LTV」に対しての貢献意識も醸成されるのだといいます。
大槻氏「具体的には『20日』や『25日』といった中長期的な期間で、コラボ終了後もログイン率が維持できているかを見ています。維持できていれば、それはユーザーが定着している証拠。つまり、BU数が増えたということです。このBU数の増減を定期的に両チームで振り返っているのです」
今回の座談会に参加された方全員に、ギフティロゴが入ったキャップが配布された
これにて、白熱した座談会は幕を閉じ、第二幕として交流会が開かれました。
交流会では、座談会で語られた内容を踏まえつつ、登壇者、来場者それぞれが自らの知見を共有したり、ネットワークを広げたりする機会にしていただきました。
交流会の様子。ギフティ支援のもと制作したギフトもご覧いただいた
ギフティでは、今後もこのようなセミナーやイベントを不定期で開催する予定です。ご興味のある方はぜひこちらのページをご覧ください。