【日経MOOK『実践!人的資本経営』より】配達員と双方向で関係を深めエコシステムを進化させる
本記事は日経MOOK『実践!人的資本経営』(日本経済新聞出版)の内容を、日経BPの許諾を得た上で転載しています。
全国47都道府県で国内最大級のデリバリーサービスを展開する出前館。加盟店からユーザーへの配達を担う配達員向けに、ギフティのデジタルギフトを贈る企画を実施した。
その狙いや背景について、出前館 執行役員 シェアリングデリバリー本部 本部長の森山海太氏と、ギフティ Gift Distribution Corporate Gift Directorの熊谷優作が対話を重ねた。
サービスを担う配達員は重要なパートナー
熊谷:まずは森山さんの今の役割についてお聞かせください。
株式会社出前館 執行役員 シェアリングデリバリー本部 本部長 森山海太氏
森山:出前館のビジネスは大きく2つあり、1つはアプリやWebサイトを通じた加盟店へのデリバリーユーザーの送客、もう1つは商品配達の代行です。
私は後者を担当するシェアリングデリバリー本部にいます。ご存じのようにフードデリバリーは、コロナ禍で営業縮小を余儀なくされた飲食店の営業支援と、新たな労働機会を提供する側面から拡大を続けてきました。
事業のフェーズによって注力する領域は変わっているのですが、最近では配達員の方々の確保やサービス品質の維持向上、稼働の促進といったテーマに取り組んでいます。
熊谷:配達員の方々の働き方に変化を感じますか。
森山:ギグワーカーという働き方そのものが、日本ではコロナ禍を背景に急速に広がってきたもので、模索の過程にあると思います。コロナの渦中にあっては短期的な収入源として出前館を選ばれた方々が多かったと思いますが、現在はデリバリーを仕事の1つとして捉えている方も大勢います。
熊谷:出前館さんのGMV(流通取引総額)の60%は配達の事業が占めています。フードデリバリーのみならず、日用雑貨などのノン・フードデリバリー領域を広げていく方針の中、配達員の方々の存在についてはどのように捉えていますか。
森山:私たちが提供するサービスは配達員の方々がいなければ成り立たず、重要なパートナーだと認識しています。今後は、配達するものの量もカテゴリーも増える想定ですから、きめ細かな配慮がより求められます。
これまでのフードデリバリーでも、温かいものは温かいままお客様にお届けできるよう、デリバリーバッグでの荷詰めや保温上の工夫といったノウハウを提供してきましたが、これも配達員の方々が実際に取り組むことではじめて品質の向上につながります。
加盟店やお客様との直接の接点となる配達員の方々の存在がより重要になるとともに、中長期的な関係の強化を目指していかなければならないと考えています。
シェアリングのビジネスとギフトの親和性は高い
ギフティ Gift Distribution Corporate Gift Director 熊谷優作氏
熊谷:配達員への感謝の気持ちとして、ギフトを贈る施策を実施されました。その概要をお聞かせください。
森山:一定の配達数と評価基準を満たした方に出前館の加盟店で使えるギフトチケットをプレゼントする施策を2024年1月末に行いました。
熊谷:実施の背景についても教えていただけますか。
森山:大きく2つあります。1つは単純に冬場の厳しい時期の配達に対する感謝の思いです。寒い日になると、ご家族分をまとめて注文されることも増え、注文量は増大します。大変な季節にもかかわらず稼働してくださる配達員の方々に感謝をお伝えしたいと考えました。
もう1つは加盟店へのフォローアップです。いつもは配達する商品の受け取り先として出向いているお店に、客の立場で来店し飲食や購入を体験することで、加盟店に対する愛着が深まりポジティブな感情を抱きやすくなるのではと思っています。
熊谷:ギフティの「giftee Box®」を採用していただいたのも、利用できる加盟店をセレクトできる点があったのでしょうか。
カフェやコンビニ店舗などで使える約1,000種類のラインナップの中から、好きなギフトを選べる「giftee Box®︎」
森山:そうですね。実は自社でも「出前館」で使えるデジタルギフトサービスを展開しているのですが、配達員の方々の思いを意識した際、私たちのお仕着せで感謝の気持ちを伝えることに違和感を覚え、「giftee Box®」を選びました。
プレゼントを提供するタイミングをアレンジでき、配達の途中や配達終了時に受け取っていただければモチベーションも高まると思いました。あわせて、オプションとしてデジタルのメッセージカードに、メッセージを添えることで更なるエンゲージメントの向上につながればと考えています。
ギフト配布後には、受け取り報告や実際に使用した様子を写真付きでSNSに投稿される方がいたほか、使用先となった加盟店からもご好評をいただくなど、配達員、加盟店双方からのポジティブな反応がありました。
giftee Box®を受け取る際に、配達員が目にするメッセージカードのクリエイティブ(出前館作成)。裏面には日々の配達業務を労う感謝の言葉も添えられた
熊谷:配達員の満足度を高めるため、今後、取り組んでいきたいことはありますか。
森山:双方向でのコミュニケーションです。デリバリー業界は人材の流動性が高く、業務の受発注もアプリが基本ですが単なる経済的価値のみならず、社会的・情緒的価値も感じてもらいたいと思います。そこで、イベントや対話の機会を設けるなどして、配達員の方々からも私たちに向けたコミュニケーションが取れるようにする。そして出前館のエコシステムを進化させていくことが重要です。
最近では、お客様からのチップを制度として導入する動きもありますが、シェアリングエコノミーでのビジネスの世界に立てば、ギフトも親和性が高いのではないかと感じます。そういった面でもギフティさんの出番も増えるのではないでしょうか。