【日経MOOK『実践!人的資本経営』より】パーソナライズされたギフトで従業員の体験価値を高めていく
本記事は日経MOOK『実践!人的資本経営』(日本経済新聞出版)の内容を、日経BPの許諾を得た上で転載しています。
従業員エンゲージメントを高める施策として“ギフト”を活用する動きが広がっている。現金給付と異なり、会社からのメッセージを効果的に伝えられる利点が注目の背景にある。デジタルギフトほか、体験ギフトやSwag®(名入れグッズ)などを活用した法人向けソリューションなどを展開するギフティのサービスをまとめる。
コロナ禍の環境変化で福利厚生が機能しづらく
世界的にも歴史的にも“贈与”という行為は普遍性があり、人が思いを届ける際の手段として根付いている文化だ。その贈り手と受け手は個人と個人から、企業と個人、企業と企業へと広がっており、今や企業と従業員のコミュニケーションにも用いられている。それを可能にしたのがテクノロジーとサービス提供者の存在だ。
2010年に設立されたギフティは、その名の通りデジタルギフトを軸とした事業で成長を続け、2019年旧東証マザーズに上場、翌年に東証第1部(現東証プライム市場)に鞍替えする。特にオンライン上でチケットを表示させるデジタルギフトは個人のみならず、企業のキャンペーン景品としても定着し、法人向けのサービス導入実績は今や年間約1万3千件に上る(2024年2月時点)。
ギフティ Gift Distribution Corporate Gift Director 熊谷優作氏
こうした法人企業から最近、相談を寄せられるのが従業員や採用候補者へのギフトの活用だという。「リモートワークといったコロナ禍での環境変化で、従来の福利厚生メニューが機能しなくなり社員間で不平等感が生じたといった悩みや社内コミュニケーションの活性化といった課題を感じます」とギフティの熊谷優作氏は話す。
法人向けサービスに従事してきた熊谷氏は現在、新規事業として「Corporate Gift(コーポレートギフト)」による企業の従業員向けのサービス提供に力を注いでいる。米国での調査(※)では、雇用主から従業員に向けたギフトは満足度が高く、定着率の向上につながるという結果がある。従業員エンゲージメントの向上が労働生産性や企業業績にプラスの働きを及ぼすとの報告も多い。
「そもそも転職が常態化し離職率の高い米国で、Corporate Giftの市場規模が急拡大しており、人的資本経営が叫ばれる日本企業においても、従業員エンゲージメントの効果的な手段として潜在的なニーズは高いと考えています」(熊谷氏)
※Snappy「the annual Employer Gifting Survey」(2021)
「手間をかけず」に「記憶に残る体験」を
採用活動から再雇用に至るまで企業が従業員とつながりを持ち続けるためにも、あらゆる機会を通じて関係性を深めることが大切になる。それぞれの機会にCorporate Giftが役に立つという。
「ただ、その効果を高めるには、受け取る従業員にとって記憶に残る体験でなければなりません。一人ひとりにパーソナライズされたタイミングや内容でのギフトであってはじめて、帰属意識や貢献意識は高まっていくからです」(熊谷氏)
一方で、個々の従業員ごとにカスタマイズしたCorporate Giftを提供し続けるのは、企業の担当部署にとって負担が重くなる。つまり、贈り手側は「手間をかけず」に、受け手側は「記憶に残る体験」を両立させるのが持続的な施策に仕立てるポイントになる。ギフティではそのために、「ギフトコンテンツ」「システム」「企画支援」の3つから成る一気通貫のソリューションで支援に当たっている。
「ギフトコンテンツ」は、コンビニや有名ブランドの商品をURL化し、社内チャットツールやメールで送ることができる「デジタルギフト」や体験施設の利用チケット、オリジナルのギフトカード、オリジナルグッズなど多種多彩なメニューを用意。オリジナルギフトは既存のノベルティの域を脱し、上質なブランドとパートナーシップを結ぶ。
採用候補者や従業員の体験価値に通じるシーン
「システム」は、ギフティのこれまでの企業活動で培ってきた効率的な配布オペレーションを提供。適切なタイミングでの配布、物であれば配送管理といった手間がかかる部分を極力自動化できる。
「企画支援」は、クライアントの課題をヒアリングのうえ、受け取り手との関係性やシーンに応じて、最適なギフト内容からギフトを渡すタイミングや方法まで提案。「“打ち手”がわからないと悩む企業様の声は多く、当社のこれまでの経験からトータルにプランニングをさせていただきます」(熊谷氏)
Corporate Giftは、企業からのメッセージを印象深く伝えられる強みを持つ。取り組みは、もちろんギフティ社内でも実践している。2023年に新卒で入社した社員には、特別なギフトとしてオリジナルデザインのトートバックやキャップを、社員証やネックストラップ、名刺といった社員の証しになるアイテムとともにパッケージ化した。メッセージ入りのギフトカードも付与し歓迎と祝いの気持ちを伝えた。
「記憶に残るうれしい体験には、ポジティブな感情を引き起こす効果があり、贈り手の気持ちを届けるうえでもギフトの効果は非常に大きいとギフティでは考えています。従業員を大切に思う気持ちは業種や従業員規模を問いません。担当部署にとっても一連の作業負荷を減らせれば、施策の質を深掘りすることにつながります。人への投資において、ギフトが持つ可能性に関心を寄せていただけるとうれしいです」(熊谷氏)
【事例】大和証券グループ本社
永年勤続を記念して、従業員にgiftee Box®︎約9万円分をプレゼント
勤続20年目、30年目の社員に対する永年勤続表彰のカードの制作からgiftee Box®の提供までを行った。カード内には、中田誠司代表執行役社長(※)からの直々のメッセージが添えられており、日常で利用しやすいギフトや余暇を楽しむギフトなど幅広いラインナップから好きなものが選べる。人事部の担当者からは、社員一人ひとりのライフスタイルに応じて利用できるギフトの選択肢が拡がり、満足度向上につながっているとの声があった。
※2024年4月より、中田誠司社長は会長に就任し、荻野明彦副社長(当時)が新たに社長に就任している。