永年勤続とは?離職率抑制に効果的なギフトの種類や事例を解説
永年勤続とは、一つの職場で長年にわたり勤め続けることです。企業がそうした従業員の功績に感謝し、表彰する制度が「永年勤続表彰」です。これにより、従業員のモチベーション向上や離職防止などが期待できます。
近年、終身雇用の概念が薄れ、若年層の転職や離職が増加。その中で、永年勤続表彰に一層注目が集まっています。また、表彰の効果を高めるには、適切なギフト選びが重要で、従来の金一封に加え、休暇やカタログギフトといった記念品など、選択肢も多様化しています。
この記事では永年勤続表彰の効果や贈り物の種類について解説します。企業文化に合った表彰制度を作り、従業員の満足度向上を目指す際の参考にしてください。
永年勤続とは
永年勤続とは、一つの職場で長年にわたり勤め続け、会社の成長や発展に大きく寄与したことを指します。この言葉には、単に「長く働いた」という時間的な意味だけでなく、その間に培われた経験や知識、そして貢献への敬意が込められています。
企業は、勤続5年・10年・20年・30年といった節目を迎えた社員に対し、感謝と労いの意を表すために「永年勤続表彰」という制度を設けることがあります。この表彰は、社員一人ひとりの努力を認め、企業文化や価値観を共有する重要な機会とされています。なお、表彰の実施間隔は、勤続10年・20年・30年と10年刻みで実施している企業が多いようです。
そして、永年勤続表彰の贈呈品には、以下のようなものが選ばれることが多いです。
・金一封(社内ポイント) ・記念品 ・休暇
永年勤続表彰は、古くから続く日本企業の特徴的な慣習の一つであり、戦後の高度経済成長期に多くの企業で導入されました。当時は、終身雇用を前提とした働き方が主流で、長期勤続は当たり前。表彰の贈り物も金一封などシンプルなもので十分とされていました。
しかし、転職がより一般化した現代においては、社員の定着率向上やモチベーション維持のため、永年勤続表彰の重要性はさらに高まっています。永年勤続表彰を通じて従業員に心からの感謝を伝えられれば、企業全体の一体感が醸成され、結果として企業価値の向上にもつながるでしょう。
永年勤続表彰による効果
前述の通り、永年勤続表彰を効果的に実施することで、従業員のモチベーション向上や離職防止、ひいては企業価値の向上にもつなげられるでしょう。ここでは、その効果について、より掘り下げていきたいと思います。まず、永年勤続表彰を行うことによる、以下の効果について詳しく見てみましょう。
・従業員のモチベーションアップ・離職防止になる ・従業員を公平に評価できる ・従業員の家族からのイメージアップにつながる
従業員のモチベーションアップ・離職防止になる
永年勤続表彰を実施することで、従業員は「自分がここまで勤め上げてきたことを評価してくれている」と実感。働く意欲が高まるでしょう。特に、自身の努力や成果が組織全体から認められることは、職場での存在意義を再認識するきっかけとなり、日々の業務へのモチベーション向上につながります。
また、表彰という形で感謝を示すことで、表彰された従業員以外も含め全従業員の帰属意識が高まり、「この会社でこれからも貢献したい」と感じる土壌が会社全体で作られます。これにより、自然と離職率を抑える手段として重要視されているのです。
さらに近年では終身雇用の概念が薄れ、転職が一般的になりつつあります。総務省が発表した「労働力調査(詳細集計)2024年(令和6年)7~9月期平均」によると、就業者6,800万人のうち転職者数は346万人と、前年同期に比べ21万人増加しており、転職者数は年々増加傾向にあります。
このような時代背景において、永年勤続表彰は、他社との差別化を図る重要な手段としても注目されているのです。
加えて、心理的な側面からも永年勤続表彰は有効です。「努力が報われる」という実感を得た従業員は「自己効力感(目標を達成するための能力を自らが持っていると認識すること)」が高まり、さらなるチャレンジ精神を持つようになる傾向があります。このようなポジティブな循環が、企業全体のパフォーマンス向上にもつながるのです。
つまり、永年勤続表彰は単なる慣習や形式にとどまらず、従業員一人ひとりの心に響く重要な施策として、企業の成長を支える要素となります。
従業員を公平に評価できる
営業やマーケティングなどの職種は成果を数値で表しやすく、個々のパフォーマンスが比較的明確に評価されます。対して、人事や経理といったバックオフィス系の部署では、業務の性質上、目に見える成果を数値化することが難しく、適切な評価がなされにくいという課題があります。
そのような中で、「勤続年数」という客観的かつ平等な指標を用いる永年勤続表彰は、すべての従業員を公平に評価することができます。この制度を通じて、業務内容にかかわらずすべての従業員が「自分も組織にとって価値がある存在だ」と認識できるようになります。
特に「評価されていない」または「努力が正当に認められていない」と感じることは、離職の主要な原因となることが多いです。誰もが平等に評価される仕組みを導入することは、どの部署に所属していても平等に評価されている、と感じてもらう上では非常に重要です。
従業員の家族からのイメージアップにつながる
従業員の家族から「良い会社に勤めている」と感じてもらうことは、企業にとっても大きな価値を持ちます。永年勤続表彰された社員が、賞状や記念品などを自宅に持ち帰り、表彰のエピソードを家族に共有することで、家族からも「この会社は、従業員をしっかり評価してくれる」と安心感を抱くでしょう。
こうした家族の安心感や信頼は、従業員自身のモチベーションや満足度をさらに高めるだけでなく、家族からのサポート体制の強化にもつながります。結果として、家族の支えもあり、従業員がより仕事でパフォーマンスを発揮しやすくなりますし、「従業員の家族」というステークホルダーからの企業のイメージアップにも寄与するでしょう。
永年勤続表彰で一般的に贈られるもの
ここまで、永年勤続表彰を実施する効果について解説しましたが、実際にどのようなものが贈られるのでしょうか。永年勤続表彰では、以下のようなものを贈るのが一般的です。
・金一封(社内ポイント) ・記念品 ・休暇
金一封(社内ポイント)
賞与やインセンティブとして、金一封を贈るケースは多くあります。金一封はシンプルで直接的な感謝の表現となり、使い道が自由なため、従業員の満足度を高める手段として広く活用されています。勤続年数が長くなるほど、金額も高くなるのが一般的です。
また、福利厚生としてカフェテリアプランや社内ポイントを導入している企業では、ポイントを贈呈するケースも見られます。
記念品
永年勤続表彰として、商品券、旅行券、花、カタログギフトのような記念品を贈呈する企業もあります。記念品も賞与と同様に、勤続年数が長くなるほど金額が高くなるのが一般的です。以前は、社名入りの置き時計といった記念品が贈呈されることが多かったものの、現在ではその数は減少しています。
近年では、受け取った人が賞品を自由に選べる「選択型ギフト」も人気があります。たとえば、カタログギフトや選択型のデジタルギフトなら、受け取った人が自分の好みに合ったものを選べるため、非常に喜ばれることが多いです。また、記念品のみを贈るケースもあれば、金一封と記念品を組み合わせて贈るケースも一般的に見られます。
休暇
「インセンティブ+休暇」や「記念品+休暇」といったように、リフレッシュ休暇も併せて贈る企業も増えています。特別な休暇を与えることで、従業員に「長く務めてきたことを労ってもらっている」と感じてもらうことができ、心身をリフレッシュして仕事へのモチベーションを高めてもらう効果が期待できるでしょう。
永年勤続表彰の相場
勤続年数によって、金額が高くなるとお伝えしましたが、実際の相場を見てみましょう。永年勤続表彰の相場は以下のとおりです。
勤続5年 賞金の場合:18,000円 賞品の場合:16,000円
勤続10年 賞金の場合:36,000円 賞品の場合:36,000円
勤続15年 賞金の場合:49,000円 賞品の場合:37,000円
勤続20年 賞金の場合:74,000円 賞品の場合:75,000円
勤続25年 賞金の場合:91,000円 賞品の場合:71,000円
勤続30年 賞金の場合:133,000円 賞品の場合:130,000円
勤続35年 賞金の場合:119,000円 賞品の場合:85,000円
勤続40年 賞金の場合:140,000円 賞品の場合:110,000円
参照:永年勤続表彰制度に関する調査|産労総合研究所
永年勤続表彰は、5年刻みでおこなう企業と10年刻みで行う企業があります。勤続25年や35年は相場が低いため、5年刻みの場合は10年刻みよりも1回の金額を低く設定している企業もあると考えられます。
永年勤続表彰で記念品を贈る際の熨斗と水引
永年勤続表彰の記念品を贈る場合の、熨斗(のし)と水引(みずひき)のマナーについても知っておきましょう。
現物の記念品を贈呈する場合は、お祝い事なので熨斗を付けます。熨斗の名入れは、会社名を書きましょう。水引は「紅白5本蝶結び」を選びます。水引の本数は多いほど格式が高くなり、適した本数を選ぶことが大切です。そのため、永年勤続表彰では5本が最適です。
表書きには ・御祝 ・勤続◯周年 ・祝勤続◯年 といったように書きましょう。
永年勤続表彰の贈り物選びで気をつけること
永年勤続表彰の贈り物として、賞金を検討している企業も多いでしょう。しかし、何かを贈るなら現金以外のものがおすすめです。なぜなら、以下のような理由があるからです。
・換金性が高いものは課税対象になりうる ・ギフトを通じて“現金では得られない体験”が提供できる
換金性が高いものは課税対象になりうる
永年勤続表彰として金一封や商品券などの換金性が高い記念品を贈った場合、それらは給与支給とみなされるため、全額が課税対象になります。このような理由から、現金や金券を贈ることは税務面でのリスクが高くなります。また、カタログギフトのように受け取った人が好きなものを選べる場合も、一定の条件下で課税対象となることがあります。
なお、課税対象にならないのは、以下のようなものです。
・記念品を現物で贈った場合 ・旅行券などの慰労を目的とした支給
しかし、現物の記念品や旅行券は、受け取った従業員の好みに合わない場合もあるため、必ずしも全員が喜ぶわけではありません。その点、受け取った人自身が選べるギフト(選択型デジタルギフトやカタログギフト)は、相手の個々のニーズに合わせて贈れるため、従業員満足度を高める可能性が高いと言えます。
離職率抑制にはトータルで体験設計が重要
賞与やインセンティブは単なる臨時収入に感じられがちです。そのため、受け取った現金の使い道が職場で話題になることは少なく、本人ですら何に使ったのかを思い出せないこともしばしばあるでしょう。
一方で、たとえば休暇のような体験をギフトとして贈れば、思い出として強く印象に残ります。家族や従業員同士で楽しんだり、シェアしたりすることで、より深く記憶に刻まれ、感謝の気持ちや会社へのロイヤルティが高まります。
また、カタログギフトやデジタルギフトで自分がえらべるシーンをあえて作ることで、さらに記憶に残りやすくなり、会社に対する関心や感謝の気持ちをより強く感じてもらえます。その結果、従業員エンゲージメントの向上や離職率抑制によりつながるでしょう。
永年勤続表彰の記念品には「選択型デジタルギフト」がおすすめ
近年では、永年勤続表彰の記念品として、デジタルギフトを贈る企業も増えています。なかでも、受け取った人が付与されたポイント内で自由に複数の商品と交換できる「選択型デジタルギフト」は、高い満足度を得られることが期待できます。
たとえばギフティの「giftee Box」なら、10,000円分を受け取った場合、その金額内で以下のように交換できます。
・5,000円分をAmazonポイント ・3,000円分を商品引換券 ・2,000円分をカフェチケット
このように、自由にカスタマイズできるため、受け取った人の個々のニーズに応じた選択が可能です。カタログギフトであれば、選択肢の幅がある程度限られてしまう一方、デジタルギフトは商品の幅が広く(ギフティの場合、1000種類以上のラインナップから選択可能)より個々のニーズに対応しやすい点が強みといえます。
永年勤続表彰の記念品としてデジタルギフトを贈った企業の事例
実際に、永年勤続表彰の記念品として「選択型デジタルギフト(giftee Box)」を贈った企業の事例を見てみましょう。
オリジナルデザインカード×デジタルギフトで、特別感と利便性が両立した記念品に
▼課題 ・対象者の年齢層・性別・居住エリアがさまざまななため、全員が満足する記念品を選ぶのが難しかった ・複数拠点への記念品発送作業が手間になっていた
▼贈ったギフト ・giftee Box
▼成果 ・さまざまな商品から選べるため、個々のニーズに応えられて満足度を上げられた ・複数拠点への配送対応を効率化でき、表彰施策準備の時間を削減できた
▼概要 株式会社ディアーズ・ブレインホールディングス様では、これまでは永年勤続表彰として表彰状とカタログギフトを別々に準備し、表彰状は手渡し、カタログギフトは配送していました。
表彰状と一緒に記念品を渡すことが理想でしたが、従業員がカタログギフトを持ち帰る負担や紛失のリスクを考慮し、後日配送していました。しかし、記念品準備と配送作業に多くの時間を割いていたことで、年々記念品が簡易になっていました。また、年齢や性別などがバラバラであったため、全員が満足する記念品を選ぶことも困難でした。
そこで、永年勤続表彰の贈り物を「giftee Box」に変更。配送の手間が省け、従業員から「貰ってよかった!」「商品を選べるのが嬉しい」という声がありました。多くの従業員のニーズに答えられる満足度の高い記念品を贈ることができただけでなく、配送を効率化できて表彰施策準備の時間を削減できました。
▽この事例の詳細はこちら 株式会社ディアーズ・ブレインホールディングス様 - 永年勤続表彰の記念品 の導入事例
デジタルギフトを人的資本経営の一部に
▼課題 ・カタログギフト利用者の管理を手作業で行なっており、手間だった
▼贈ったギフト ・giftee Box
▼成果 ・事務処理の手間が減った ・物理的に紙のカタログの発行が減ったことで、ペーパーレスとなり効率的になった
▼概要 大和証券株式会社様では、もともと他社のカタログギフトを永年勤続表彰の記念品として贈呈していました。社員にカタログギフトを渡して、付属のはがきでギフトを申し込んでもらう形式でしたが、そうすると、社員の名前ではなく、社員の家族の名前で申し込みされるケースもあり、名前に紐づけて手作業で管理をしていたため、名前が異なると判別がつきにくいという課題がありました。
そこで、スマートフォンを日常的に使用し、デジタルギフトに馴染みのある社員も増えてきたことなどから、永年勤続表彰の記念品としてデジタルギフトを導入されました。
これにより、社員番号に紐づけて管理できるようになり、結果、それまでは申し込んだかどうかを電話確認で行なっていたのが、申し込みにまつわる事務処理の手間が大幅に削減できました。また、物理的に紙のカタログの発行が減ったことで、ペーパーレスとなり効率的になりました。
▽この事例の詳細はこちら 大和証券株式会社様 - 永年勤続表彰ギフトの事例
まとめ
本記事では、永年勤続表彰の贈り物や相場などについて解説しました。最後にまとめをご覧ください。
▼永年勤続表彰の効果 ・従業員のモチベーションアップ・離職防止になる ・従業員を公平に評価できる ・従業員の家族からのイメージアップにつながる
▼永年勤続表彰の一般的な贈り物 ・金一封(社内ポイント) ・記念品 ・休暇
▼永年勤続表彰の相場 勤続5年 賞金の場合:18,000円 賞品の場合:16,000円
勤続10年 賞金の場合:36,000円 賞品の場合:36,000円
勤続15年 賞金の場合:49,000円 賞品の場合:37,000円
勤続20年 賞金の場合:74,000円 賞品の場合:75,000円
勤続25年 賞金の場合:91,000円 賞品の場合:71,000円
勤続30年 賞金の場合:133,000円 賞品の場合:130,000円
勤続35年 賞金の場合:119,000円 賞品の場合:85,000円
勤続40年 賞金の場合:140,000円 賞品の場合:110,000円
永年勤続表彰の贈呈品として、以前は金一封や、社名が刻印された時計といった記念品が一般的でした。しかし、離職率が高まる現代では、従業員のモチベーションや満足度を向上させ、離職率の抑制を目指すのであれば、従業員が本当に喜ぶものを提供することが肝要です。
そこで、近年では多くの人の個々のニーズに応えられる「選択型ギフト」たとえばカタログギフトやデジタルギフトを贈る企業が増えていますので、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。