

“推し”への想いを可視化する──ファンと作る「Voicy ファンフェスタ’25」グッズ・アパレル施策の舞台裏
音声プラットフォーム事業を展開する株式会社Voicy様は、2025年4月26日(土)・27日(日)に、リアルイベント「Voicy ファンフェスタ’25 - いつもの声に会いにいく、特別な日。(以下、Voicy ファンフェスタ’25)」を開催しました。全8部構成で、各部には6〜8名のVoicyのパーソナリティが登壇。国会議員の細野豪志氏や武蔵野大学アントレプレナーシップ学部 学部長の伊藤羊一氏など、Voicyで多くのファンを持つ人気パーソナリティの方々が登壇し、会場は大いに盛り上がりました。
さらに「このイベントで来場者の方に会場でお祭りのような“一体感”を感じてもらいたい」というVoicy担当者の想いから、来場者が当日着用できるTシャツなどを事前にEC販売する取り組みもあわせて実施しました。
今回は、この施策がイベントの盛り上がりにどのように貢献したのかに加え、企画の背景や、支援したpaintoryとの協業内容、さらに実施を通じて得られた成果や気づきについて、担当者の方にお話を伺いました。
※本施策は、ギフティのグループ会社であるpaintoryの支援事例です。paintoryは、個人・法人を問わず、誰もが簡単に小ロットからプライベートブランドを始められるカスタマイズウェアサービスを提供しています。
株式会社Voicy

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耳元から会場へ。Voicyファンが集う念願のリアルイベント
「Voicy ファンフェスタ’25」はどのようなイベントだったのですか。

株式会社Voicy 高沢香織さん。プロダクトマネージャーや社内広報の経験を経て、現在は「Voicy ファンフェスタ’25」などのイベント運営を含むサービスブランディングの領域も担当している
「Voicy ファンフェスタ’25」は、弊社が運営する音声配信プラットフォーム「Voicy」のファンイベントです。
Voicyは、インターネットを通じた音声配信のプラットフォームで、ユーザーは基本的にイヤホンを通じて音声コンテンツをひとりで楽しむ、一見すると“一方通行の体験”と思われがちです。しかし、日々のパーソナリティの声に触れたり、アプリ上でコメントのやりとりをする中で、誰かの声に元気をもらったり、前向きな気持ちになったりといった“感情のつながり”が生まれているんですよね。
そういったパーソナリティとリスナー、さらにリスナー同士のつながりが生まれているコミュニティの熱量を「Voicy ファンフェスタ’25」では、リアルな場で共有・体感できるようにしたいと考えていました。毎日Voicyで聴いている、“いつもの声”に会いに行ける機会は、リスナーにとって自分の「推し」に会いにいく特別な日になると思い、イベントを作っていきました。
会場は約300人が入れる映画館を貸し切って全8公演実施。正直、満席になるかどうか不安もありましたが、パーソナリティの皆さんが日々の音声配信で熱心に告知してくださったおかげもあり、両日とも全公演でチケット完売となりました。

会場には映画館を使用し、約300名収容の空間で全8公演を実施。各回には6〜8名のパーソナリティが登壇し、すべての公演が満席となる盛況ぶりだったという
そんな盛況を博したイベントをさらに盛り上げるため、グッズ・アパレルをEC販売されたそうですね。
今回、グッズの展開は「イベントをさらに盛り上げるための要素のひとつ」として、比較的早い段階から検討していました。特に今回はリアル開催ということもあり「せっかくなら、会場内で一体感を感じてもらえるような仕掛けがほしい」という想いがあって。
その手段のひとつとして、来場者の皆さんが当日着用できるアパレルをつくろうというアイデアが生まれ、paintoryさんにアパレルの制作を依頼しました。
打ち合わせでpaintoryのデモ画面を見て「これだな」と思った
なぜpaintoryを選んでくださったのでしょうか。
初めてご担当の方と打ち合わせをした際、paintoryさんであれば、タグや刺繍など細部までこだわったものづくりが可能であったり、商品購入ページが無料で立ち上げられて、しかも、グッズ・アパレルの制作・配送までをワンストップで対応していただけたりと、魅力に感じるポイントがいくつもありました。
中でも「これだな」と強く思ったのは、その打ち合わせで見せていただいた商品購入ページのデモ画面です。イベントロゴを配したシンプルな構成ながら「これは自分たちらしいストアが作れそうだ」と、一気にイメージが湧いてきたんですね。
別の弊社メンバーとも「ああいうストアが実現できるのは嬉しいですね」「刺繍やタグもオリジナルで作れるらしいですよ」と盛り上がったのを覚えています(笑)。

商品購入ページのイメージ画面。4月9日までに注文した方には、イベント当日までの自宅配送を可能とした
また、paintoryさんのアパレルはすべて受注生産方式で作られるため、在庫リスクや初期費用を気にせずに進められたんですね。おかげで、売れるかを気にして諦めてしまいそうなアイデアにも果敢にチャレンジができました。また、限られた人数体制や準備期間でイベントを運営していた私たちにとって、ファンからの受注後の発送業務は一切不要なのが大変ありがたかったです。その結果、全23ものアイテムを展開することができました。
具体的にはどのようなアイテムを展開されたのでしょうか?
メインで制作したのは、公演ごとに色分けされた8色展開のTシャツです(カラーはイエロー、オレンジ、ピンクなど。サイズはS/M/Lの3種類)。
イベントでは8公演それぞれにテーマカラーを設定していたので、参加者の皆さんがその公演カラーのTシャツを身にまとって会場に集まることで、視覚的な一体感を生み出せるようにと考えました。たとえば、集合写真を撮ったときに「この公演はこの色だったんだ」とひと目で分かるような、カラフルで一枚絵のような風景が広がったら素敵だな、とイメージしていたんです。
一方で「イベント当日だけで終わらない、日常使いできるアイテムにしたい」という想いも同時にありました。そこで、胸元にはイベントロゴをあしらいつつ、黒や白などのベーシックな色を基調としたTシャツや、トートバッグ、サコッシュなどのアイテムも展開しました。
特にトートバッグは、30〜50代の女性ユーザーが多いというVoicyのリスナー属性を踏まえ、素材感やサイズ感・使い勝手にこだわって設計しました。たとえば、ご家族でのお出かけ時に“車にボンと積める”ような大きめのサイズ感や、荷物が多い日でも安心して使えるしっかりとしたキャンバス生地を採用するなど、日常での実用性を重視しました。
ロゴの再現性か?全体のバランスか?細部まで妥協しないものづくり
アイテム制作の過程で特にこだわった点があれば教えてください。
最もこだわったのは、ロゴの刺繍ですね。
たとえば、トートバッグ。中央にはイベントのロゴが刺繍であしらわれているのですが、当初、paintoryさんからはやや大きめにロゴが配置されたサンプルをご提案いただきました。理由を伺うと「ロゴのように細かいデザインを刺繍で再現する場合、小さすぎると文字が潰れてしまう」とのことでした。
ただ、私たちとしては「サイズを大きくしすぎると全体のバランスが崩れてしまう」「野暮ったい印象になってしまう」と感じていたため、ここは妥協せず、ロゴサイズの調整をお願いすることに。するとpaintoryさんも「では、文字が潰れないギリギリのサイズでチャレンジしてみましょう」と、丁寧に対応してくださいました。

結果的に、ロゴの文字が潰れることなく、全体のデザインバランスとの両立も実現できたと思います。こうした細部へのこだわりや、丁寧なコミュニケーションを重ねられたことが、最終的なグッズのクオリティにつながったと感じています。

トートバッグにあしらわれたイベントロゴ。デザインが凝っているほど、刺繍でその再現性を保つのは難しい
クラスTより普段着?と思いきや……ファンを動かした“ひと工夫”
実際に販売してみて、来場者の方々の反応はいかがでしたか?
そうですね。たとえばイベント当日、来場者や登壇者の方々が実際にトートバッグなどを使ってくださっていた光景が印象的でしたね。
また、イベントから数か月が経った今でも「今日もイベントで買ったTシャツを着ています」や「夫が部屋着にしてました(笑)」といった投稿がSNSでたびたび見られて。グッズを通して、あのときの楽しかった思い出を振り返ってくださっているのかな、と感じられて、とても嬉しいです。
あと、少し脱線しますが、ある公演のパーソナリティの方々が事前の配信で「当日は(公演の色の)ポンポンを持ってこよう!」と呼びかけていらっしゃったんです。登壇者だけでなく、来場者やファンの皆さんも、自らイベントを盛り上げよう、楽しもうとしてくださっている姿勢が伝わってきて。改めて、Tシャツをはじめとするグッズが、イベントの一体感や熱量を高める大きな要素になっていることを実感しました。
意外な売れ筋商品などはありましたか?
正直、一番驚いたのは、シンプルな“普段使いアイテム”よりも、イベント感のある「クラスTシャツ」の方が圧倒的に人気だったことです。最近はミニマル志向の方も多いし、派手な色は避けられるかも……と思っていたんですが、まったくの逆でした。

特に話題になったのが、第8部用に用意した「国際通りお土産風 Tシャツ」です。これだけ、登壇者の個性にちなんで遊び心で我々が名付けたのですが(それ以外は一律「Voicy ファンフェスタ 第⚪︎部・クラスTシャツ」)、ネーミングが奏功したのかこれが一番売れました(笑)。

「Voicy ファンフェスタ 第8部・国際通りお土産風 Tシャツ」紫の色のトーンが沖縄の国際通りのカラーを想起させる&登壇者が沖縄在住であることなどから、名付けられた
こうした意外な結果を知れたのも、在庫を持たずに企画アイデアを気軽にカタチにして、色々とチャレンジできるpaintoryさんのサービスがあったからこそだと思います。
「イベント後も愛され続ける“もの”を届けたい」
今後のグッズ展開や関連イベントについての展望を教えてください。
今回のイベントを通して、グッズの力をあらためて実感しました。特にクラスTシャツが想像以上に売れたことは大きな気づきで、今後もリアルイベントでのグッズ展開には積極的に取り組んでいきたいと思っています。次回は、より多彩なアパレルラインナップにも挑戦してみたいですね。

また、今後はパーソナリティの方のグッズ展開にも可能性を感じています。実際に、あるパーソナリティさんが配信の中で自分のおすすめアイテムを紹介したのをきっかけに、そのメーカーさんとつながって「コラボグッズを作る」といった話も出てきていて。そういう自然発生的な動きもすごく面白いなと思いました。
Voicyには、自分でショップを運営していたり、ものづくりにこだわりを持っているパーソナリティさんも多くいらっしゃったりするので、ファンの方が“自分の推しが作ったアイテム”を手に取る、という体験はきっとすごく喜ばれると思います。
そして何より、Voicyを運営する身として、これからも“手にしたくなる、大切にしたくなるもの”を丁寧につくり続けていきたいという想いがあります。イベントが終わったら捨てられてしまうものではなく、手に取った方が自然と愛着を持ち、日常の中でも使い続けたくなるようなもの。そして、ふとした瞬間に「そういえば、あのイベントすごく楽しかったな」と思い出してもらえるようなものを、今後もお届けしていきたいと思います。