

MUFGが挑んだ“初期費用ゼロ×在庫ゼロ”のアパレル施策 持続可能な社会貢献の発信とは?
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)様はこのほど、ギフティのグループ会社であるpaintoryのECサイトを活用し、「受注生産で在庫を持たず、初期費用ゼロ」を実現する社内限定アパレル施策を実施しました。
具体的には、MUFGのロゴをあしらったTシャツやカーディガン、キャップなど複数のアパレルを社員限定でEC販売されました。その結果、社員のエンゲージメント向上に加え、今後の社会貢献活動の発信につながる新たな企画検討など、副次的な効果も得られたとのことです。
今回は、MUFGの石渡真央さんと、paintoryの法人領域の事業開発を担当する株式会社ギフティの梅垣祐介さんに、導入の背景から成果、そして持続可能な社会貢献活動の発信に向けた今後の展望についてうかがいました。
※本施策は、ギフティのグループ会社であるpaintoryの支援事例です。paintoryは、個人・法人を問わず、誰もが簡単に小ロットからプライベートブランドを始められるカスタマイズウェアサービスを提供しています。
株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ

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全国
より多くの社員に協賛イベントに関心を持ってもらいたい
お二人のご所属や普段の業務内容を教えてください。
石渡さん:私は三菱UFJフィナンシャル・グループにて、社会貢献活動やスポーツ協賛などの業務を担当しています。

株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループ 経営企画部 ブランド戦略グループの石渡真央さん
梅垣さん:私は、paintoryをはじめとするギフティのグループ会社のPMI(※)を担当しています。今回は、paintoryの事業開発担当として、MUFG様向けの企画をフロントでご提案させていただきました。
※Post Merger Integrationの略。M&Aの目的を達成し、経営・業務・意識といったあらゆる側面を統合することで、シナジー効果を最大化するためのプロセスのこと

paintoryの梅垣祐介さん(株式会社ギフティ PMI推進室)
今回のお取り組みの背景を教えてください。
石渡さん:弊社は現在、スポーツリーグなどさまざまなイベントの協賛をしているのですが、その中で常に感じていたのが「いかにしてより多くの社員にMUFGが関わるイベントに関心を持ってもらえるか」という課題でした。
従来は、たとえば協賛するスポーツリーグの試合を社員が応援する際、会社負担でロゴ入りのタオルや帽子などの応援グッズを配布していました。しかし、いくつかの課題もありました。たとえば、観戦用チケットと同数の2,000個のグッズを用意しても、試合には来てもグッズを受け取りに来ない社員も一定数おり、その結果、大量の在庫が余ってしまうという事態が発生していました。
徹底した事前調査に基づくpaintoryからの提案を受け「ここまで調べてくれるとは」と思った
なぜpaintoryと一緒に新たな取り組みをすることになったのでしょうか。
石渡さん:きっかけは、2025年3月にpaintoryさんからいただいたご提案でした。その内容に非常に感動したのを覚えています。というのも、事前に当社のWebサイトをくまなく読み込み、私が担当する社会貢献活動やスポーツ協賛の取り組みにまで深く踏み込んだご提案をいただいたからです。
たとえば、私が管轄している「MUFG ONE PARK(※)」についても、弊社のオウンドメディアなどを含めて徹底的に調べられていて「ここまでうちのことを調べてくれているのか」と正直驚きました。
※次世代を担う子どもたちにラグビーの楽しさに触れ、さらに試合を無料で観戦してもらう社会貢献イベント
梅垣さん:光栄です(笑)。もともとMUFGさんとギフティとは様々なデジタルギフトのキャンペーンなどでご一緒してきた中で、ブランド戦略グループの皆様にpaintoryをご紹介したのがきっかけでした。折角お時間をいただきますので「MUFGブランドのありたい姿を体現していくために、インナー・アウター双方のブランディング領域で何の役に立てるだろうか」と仮説を立てて、事前調査を進めるようにしました。
その提案が的を射ていたから、ご依頼に至ったのでしょうか?
石渡さん:そうですね。ちょうどその頃、直近の協賛イベントなどに絡めて「新しい取り組みをしてみたい」と考えていたため、お願いすることになりました。
質の高さが後押しに 初の販売スタイルに挑戦
今回paintoryと取り組んだ施策の内容を教えてください。
石渡さん:今回は、Tシャツやポロシャツ、カーディガン、キャップ、バケットハット、サコッシュなど複数のアイテムをpaintoryさんに作成いただきました。
販売形式もpaintoryさんのサービスを活用させていただき、paintory専用ページを通じたEC販売にしました。ログインパスワードを入力した社員だけがアクセスできるクローズドな環境で展開し、自宅へ配送する形式としました。
梅垣さん:今回の施策をご提案する際、特に強調したのは「社員限定のクローズド販売が可能である」という点でした。 というのも、MUFG様のロゴ入り商品も含まれているため、一般公開されないことが絶対条件だったのです。そのため、初回の打ち合わせでは、クローズド環境での販売がどのように実現できるのかを視覚的にお伝えするために、実際のクローズド販売サイトを模したデモ画面をご用意しました。

MUFG社内販売サイト。クローズな環境で社員のみがアクセスできるようにした
石渡さん:あのデモ画面を見たときに「クローズドな環境で販売できる」ことに加え、在庫管理が不要で、購入者の自宅まで直接配送できる仕組みも整っていたので「これは我々の工数も大きく削減できそうだ」と感じましたね。
また、今回の最大のチャレンジは「社員が自らお金を払って購入する」スタイルに切り替えた点です。私の知る限り、これは初めての試みでした。それまで、「協賛イベントの応援」といった文脈でのグッズ制作は会社が費用負担していましたが、今回は社員の自己負担に。正直なところ「果たして本当に社員が購入してくれるのか……」という不安もありました。
しかし、paintoryさんからいただいたサンプルを見て、その不安は一気に払拭されました。特に刺繍の仕上がりが非常に良く、商品の質感やこだわりがしっかりと伝わってきたんです。「これなら、社員もきっと手に取りたくなる」と確信できましたね。

「MUFGらしさ」をどう表現するか。paintoryとの丁寧なすり合わせで形に
アイテム制作の過程では、paintoryとの密なコミュニケーションがあったとうかがっています。特にこだわられた点について教えていただけますか。
石渡さん:ロゴの再現には非常にこだわりました。たとえば、MUFGのロゴマークにある“円”の中心がわずかでもずれると、社内のレギュレーションに抵触してしまう恐れがありました。
一方で、既存のレギュレーションは紙の印刷物やWeb上での再現を前提としたものでしたが、アパレル、特に刺繍で再現する場合は単にデータ通りに再現すればよいというわけではありません。「刺繍でどこまでロゴの再現性とクオリティを追求するか」という難しい課題に直面しましたが、paintoryさんには何度もサンプルを試作いただき、結果、非常に高い完成度で再現することができたと感じています。

カーディガンにあしらわれたMUFGのロゴは、中心の円の位置がレギュレーションに抵触しないよう、何度もサンプル調整を重ねて仕上げられた
ちなみに、気に入っていらっしゃるアイテムはありますか。
石渡さん:カーディガンですね。個人的によく着ています。それと、ちょっと余談ですが、そのカーディガンを着て社内ミーティングに出たときに「それ、いいね」と言ってくれた同僚が何人かいて、そのまま購入してくれたこともありました。
また、海外赴任から戻ってきた社員の一人が「海外では、自社ロゴ入りのアパレルを普段着として着る文化がある」と話していて、実際に今回販売したアイテムも日常的に着てくれています。そうした背景を知り、MUFGでもロゴ入りアパレルを自然に着られるような文化が広がっていったら嬉しいな、と改めて感じました。

支社からの既存ニーズにも応えられた
今回販売したアパレルに対しての反響など、成果を教えてください。
石渡さん:想定を上回る売れ行きでした。中でもTシャツは最も売れたアイテムとなりました。
以前から、ゴルフコンペや懇親会などのイベントで「MUFGロゴ入りアイテムを着たい」という声が各支店から寄せられ「自分たちの予算で作成してもよいか」といった問い合わせもありました。しかし、ロゴ使用には規定があるため、拠点ごとに独自作成することは難しく、実現しないケースが多かったのです。
それが今回、規定をクリアしたアイテムとして完成し、現在もECサイトで購入いただけますので、今後、各支店で「イベントでロゴ入りグッズを使いたい」というニーズがあれば、本部が正式なレギュレーションをクリアしたこれらのアイテムをご案内していく予定です。
また、アイテムの感想などをもっと集めたいと思い、梅垣さんにカジュアルに相談したところ、ご快諾いただきました。
梅垣さん:はい。今後、私たちが窓口となり、ご購入いただいた方にメールで地域や部署、ご活用目的などのアンケートを実施し、今後の施策に役立てていく予定です。
“初期費用ゼロ・在庫ゼロ”で社内施策を持続可能に
今後、想定していらっしゃるアパレル施策があれば教えてください。
石渡さん:今後は、新たに社会貢献活動向けのアパレル展開を検討しています。
ある社員の取り組みをきっかけに、その活動が周囲にも広がり、刺激を受けた社員たちが自発的に行動を起こすように。その結果、MUFGの社会貢献活動はこの1年で実施件数が60%も増加しています。こうしたポジティブな流れを追い風に、MUFGの一員であることを可視化できるアパレルも制作できれば、チームとしての一体感がさらに高まり、社外へのブランド発信にもつながると考えています。
やはり、社外発信の前に社内の一体感醸成が重要なのでしょうか。
石渡さん:はい。本部だけの施策で終わると自己満足に陥り、社員の共感を得られない恐れがあります。だからこそ「なぜMUFGが社会貢献活動を行うのか」を社内に発信し、共に参加しながら一体感を醸成することが重要だと考えています。
ただし、私たちの部署は直接的な収益を生みづらいため「どれだけのコストをかけ、どれだけの効果を得るか」というKPIの視点をより一層意識する必要があります。新施策導入時には、初期費用の有無や効果測定のしやすさが極めて重要です。
梅垣さん:多くの企業に共通する課題ですね。たとえば「カルチャー浸透」といった社内施策は、立ち上げ時や既存施策には予算がつきやすい一方、既存施策へのアドオンやアップデートを行う場合、その予算確保のハードルが高いケースが多いように見受けられます。

石渡さん:その点、paintoryの仕組みは初期費用ゼロで在庫リスクもなく、購入データを活用した効果測定も可能なので、非常に導入しやすいサービスでした。この仕組みがあったことで、部門内の提案にも説得力が増し、新たな取り組みを後押しする大きな材料となりました。
梅垣さん:そう言っていただけて嬉しいです。私たちも単なるグッズ制作や物販支援にとどまらず、MUFG様の社内文化やブランド価値を支える存在でありたいと考えています。今後も、アンケート結果を踏まえ、MUFG様の社会貢献活動の発信を力強くご支援していければと思います。