

複数の特典と交換可能に——みずほ銀行が選んだ「giftee Point Base」活用によるスピード開発の舞台裏
みずほ銀行様は2025年4月、ポイントプログラム「みずほポイントモール」をスタートされました。同プログラムでは、給与の受取や振込、公共料金の口座振替など、日常の銀行取引を通じて「みずほポイント」が貯まります。貯まったポイントはPayPayポイント・楽天ポイント・dポイントの他、各種チェーン店のデジタルギフトなど、さまざまな特典と交換可能です。
この「みずほポイントモール」はプロジェクト開始からわずか1年でのローンチに成功。複数の交換先を持つ本格的なポイントプログラムを短期間で構築できた背景には、NTTデータ様の高いシステム開発力と、ギフティの「giftee Point Base」をご活用いただいたことが大きかったといいます。
今回は、本プロジェクトの背景や成果、そして今後の展望について、みずほ銀行の玉井秀明さん、NTTデータの福井裕也さんにお話を伺いました。

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国内初 3つの共通ポイントと「1ポイント=1円相当」で等価交換できるポイントプログラム
「みずほポイントモール」のサービス内容を教えてください。
玉井さん:「みずほポイントモール」は、当行が運営するポイントサービスで、2025年4月にローンチしました。

株式会社みずほ銀行 リテール・デジタル業務部システム開発チーム 次長 玉井秀明さん。みずほポイントモールのローンチに際しては、システムの開発・運用チームを率いていた
玉井さん:みずほポイントモールでは、お客さまは口座開設や給与受取、各種金融取引など、日常的なみずほ銀行のご利用を通じて「みずほポイント」を貯めることができます。貯まったポイントは、1ポイント=1円相当で、PayPayポイントや楽天ポイント、dポイントといった共通ポイントのほか、サーティワン アイスクリームやミスタードーナツなどの各種チェーン店のデジタルギフトなど、10種類(2025年11月時点)の特典と交換できます。

他社共通ポイント・デジタルギフト交換の流れ
みずほポイントモールをローンチされた背景を教えてください。
玉井さん:今後、個人のお客さまを中心に「資産形成」や「預金増強」といった領域で、金融機関の役割が一層求められていく中、当行としても、よりお客さまのお役に立てる方法を模索してきました。
その中で、みずほポイントモールは、その名の通り“ポイントを貯める・使う”だけでなく、お客さまの資産形成や預金増強につながる行動を後押しする仕組みとして設計しています。たとえば「ライフデザイン・ナビゲーションで提案書を作成する」なども、資産形成や預金に関するアクションを行うことでポイントを貯められるようにしています。
今後はさらに、預金や投資につながる有益な情報発信を強化していく予定です。たとえば、投資信託や株式投資に関心を持つお客さまが、提携先である楽天証券などへスムーズにアクセスできる導線を設けるなど、「ポイントを貯めて使う楽しさ」と金融サービスに関する有益な情報発信を両立させることで、お客さまのLTVを高め、より長くご利用いただける関係を築いていきたいと考えています。
玉井さん:また、当行としては、お客さまとのコミュニケーションをよりパーソナライズしていきたいという背景もありました。数年前から、NTTデータ様のご協力のもと、マーケティング基盤の整備を進めており、お客さまの取引行動データをデータベース化し、その情報をもとにレコメンドを行う仕組みづくりを進めてきました。
今回、その基盤が整ったことで、ようやくお客さまにとって“目に見えるチャネル”としてみずほポイントモールを提供できるようになりました。
国内銀行として初めて(※)「PayPayポイント」「楽天ポイント」「dポイント」と「1ポイント=1円相当」で等価交換できるプログラムだと伺いました。さらに、それ以外にも複数のデジタルギフトと交換できる点も特徴ですよね。
玉井さん:はい。国内の生活者の皆さまは非常に多様な嗜好をお持ちです。そのため、みずほポイントモールのお客さまの満足度を考えた時に、どれか1つのポイントだけに限定するのではなく、やはり、お客さま一人ひとりのニーズに合ったポイントを選んで交換できるようにする方が良い、と考えました。
できるだけ多くのお客さまにご満足いただける形でサービスをローンチしたい――その思いが、今回のみずほポイントモール立ち上げのきっかけになっています。
※みずほ銀行調べ(2025年3月4日時点)
「短期間でのローンチ」というストレッチな目標
ローンチまでにはどれくらいかかったのでしょうか。
玉井さん:プロジェクトの実働期間は1年弱ほどしかありませんでした。この限られた期間内で、先ほどお話ししたようなポイントサービスをサービスインしなければならないという、非常に厳しい時間的制約がありました。
口座開設のタイミングは、銀行にとって非常に重要な「新規のお客さまと接点を持つ機会」です。特に、春の入社時期と秋の内定時期の年2回が、若年層を中心に口座開設のピークとなります。そこで、プロジェクトを立ち上げた1年半ほど前の春に「どのタイミングでローンチするか」をメンバー内で議論。結果「1年後の春」をターゲットに据え、実質10か月ほどでポイントサービスをローンチするという、非常にチャレンジングな目標を設定しました。
NTTデータ様は、SIerとして「みずほポイントモール」の開発に携わられたとのこと。今回のプロジェクトの難易度をどのように捉えていらっしゃいましたか。
福井さん:やはり、先ほど玉井様もおっしゃったように、プロジェクト開始からリリースまで約1年という厳しい期間の制約がありました。

株式会社NTTデータ 金融イノベーション本部 グローバルカスタマーサクセス室 コンサル&セールス統括部 カスタマーコンサル担当 部長 福井裕也さん
福井さん:特に、お客さまに自由に特典を選んでいただくためには、複数の共通ポイントやギフトと連携する仕組みを同時に構築する必要がありました。それぞれのポイントごとに個別の交換機能を開発しようとすると、時間も開発工数も膨大になり、とても1年では間に合わないという難しさがありました。
玉井さん:当時、NTTデータ様と相談した際にも、本来であれば最短でも2年〜2年半ほどはかかる見込みだという話がありました。そのため、開発期間を短縮するためには、機能を一部絞り込むなどの選択も検討せざるを得ない状況でした。
「ギフティは“唯一の手段だった”」
そこで、NTTデータ様を通じて弊社のサービスをご検討いただけたのですね。
玉井さん:そういうことになりますね。
福井さん:もちろん、ギフティさん以外のサービスを提供している企業とも比較検討した上で、みずほ銀行様へご提案しました。その中でも、ギフティさんはポイント交換の領域におけるプロフェッショナルだと感じています。
そう考える理由はいくつかあります。まず、PayPay様や楽天グループ様など複数のポイント事業者様とすでに連携実績をお持ちで、さらにデジタルギフトを導入されている小売企業様とのリレーションも非常に強い点です。弊社としては、そうした業界横断的なネットワークを自前で構築することは難しく、ギフティさんの既存のつながりと実績は大きな強みでした。
また、1から新たにシステムを開発することも不可能ではありませんでしたが、今回は限られた期間内でのリリースが求められていました。ギフティさんの「giftee Point Base」を活用すれば、当社が開発した特典交換以外のシステムとの接続もスムーズに行え、短期間で実現できることから、非常に大きな魅力を感じました。
みずほ銀行様は、NTTデータ様からご提案いただいた際、どのような印象をお持ちになりましたか。
玉井さん:プロジェクトを進める中で、最大の課題はやはり「時間の制約」でした。ローンチのタイミングを遅らせるわけにもいかない一方で、機能はできる限り絞り込みたくない――そんな中で、私たちが求めていた要件を満たす形でNTTデータ様が提案してくださったのが、ギフティさんの仕組みでした。
仮に自社で個別にポイント事業者と連携しようとした場合、開発工数や調整の難易度は非常に高く、春のローンチには到底間に合わなかったでしょう。
その点、ギフティさんの「giftee Point Base」を採用したことで、複数の共通ポイントやデジタルギフトとの交換機能を短期間で実現できました。ギフティさんは私たちが目指していたスピード感を叶える“唯一の手段”だったと思います。
UI・管理機能・特典──ポイントプログラム実装に必要な全ての機能を提供
今回ギフティが提供した「giftee Point Base」についてご説明いただけますか。
篠塚さん:まず弊社ではデジタルギフトそのものの提供に加えて、企業のマーケティングやキャンペーン施策の効果を高めるための各種ソリューション開発も行っています。その一環として、2024年3月にローンチしたのが、今回みずほ銀行様にご活用いただいたSaaS「giftee Point Base」です。

株式会社ギフティ 執行役員 giftee for Business事業部 本部長 篠塚大樹さん
篠塚さん:giftee Point Baseは、ポイントの付与・加減算を含む管理から、ポイントとギフトの交換までをシームレスに提供できる基盤です。ポイントプログラムの運用に必要な主要機能をワンストップで提供できるのが特徴です。
単にギフトを発行するだけであれば、API連携のみでご利用いただくことも可能です。弊社ではそのようなサービスも提供していますが、その場合、ポイントを受け取られた方がギフトを選ぶ画面や、企業が運用するための管理画面は自社開発が必要となります。そして、当然ながら、そうしたUIや管理機能をゼロから構築するには、一定の工数とコストが発生します。
その点、giftee Point Baseを導入いただければ、ギフトの交換画面から、運営者側の管理画面までを含む仕組み全体をまるごとご提供します。つまり、ポイントプログラムの設計から運用までをトータルで支援することで、よりスピーディーかつスムーズにポイントプログラムを構築していただけるのです。
篠塚さん:そして実は、見落とされがちなのがリリース後のメンテナンス対応です。開発初期の工数もさることながら、実際に負担が大きいのは運用フェーズに入ってからです。
ポイントの交換先を増やそうとすると、各社とのシステム連携がどうしても必要になります。ポイント事業者によっては「商品名や画像の更新」など、仕様変更が頻繁に発生します。これを接続先ごとに個別対応していくと、どうしても運用負荷が膨らんでしまいます。
その点、弊社では日々、デジタルギフトをご発行いただいている企業様と密に連携しながら、こうした仕様変更に迅速に対応できる体制を整えています。そのため、クライアント様は多様なポイントやギフトのバリエーションを、工数負担を気にせず拡充していただけます。
玉井さん:確かに、giftee Point Baseを導入して実感したのは、運用・メンテナンスのしやすさです。たとえば、ポイントの交換先が10社あった場合、それぞれと個別にシステム連携や契約を行うとなると、単純計算で10倍のリソースとリスクを抱えることになります。
しかし、ギフティさんの仕組みでは、そうした連携やマネジメントをギフティさん側で一元的に管理していただけます。私たちはギフティさんとコミュニケーションを取るだけで、その裏にある無数の交換先との接続やサービス提供を実現できるのです。
これは、今後の「特典の拡充」といった中長期的な運用を見据えた上でも欠かせない導入メリットだと感じています。
新規口座開設120%増 ポイント交換も活発に
みずほポイントモールの成果を教えてください。
玉井さん:実は新規獲得施策として、口座開設など一定の条件を達成されたお客さまを対象に、最大3万5,000円相当のポイントを付与するキャンペーン「秋トク祭」を実施中でして(2025年11月まで)。現状、すでに新規口座開設数は前年比約120%増と大きな成果を上げられています。
また、毎月1日には前々月分の取引に応じてポイントをお送りしていますが、多くのお客さまが付与当日にすぐ交換される動きが見られます。貯めたポイントをすぐ活用いただけている、こうしたアクティブな動きを今後も促進していきたいと考えています。
ギフトプラットフォーム運営で培った知見に期待
最後に、皆様の展望を教えてください。
福井さん:この1年は限られた期間の中で、まずは必要な機能を整えることを最優先に進めてきました。今がまさにスタート地点であり、これからはみずほ銀行様・ギフティさんとともに、利用者の体験価値をさらに高めていくフェーズだと考えています。
今後はデータを活用しながら、一人ひとりにパーソナライズされたコミュニケーションを実現し、「資産形成のヒントを得るなら、みずほポイントモールが一番」と思っていただけるサービスを共に形にしていきたいと考えています。
玉井さん:先ほどお伝えした通り、みずほポイントモールは、単なる「ポイントを貯めて使う」仕組みではなく、お客さまとの新たな接点を創出する“コミュニケーションチャネル”と捉えています。そのためにも、お客さまにさまざまなメッセージをお届けし、気づきを得ていただくことで、取引を通じた資産形成のサポートにつなげたいと考えています。
具体的に、ご検討されていらっしゃる取り組みはありますか。
玉井さん:来春以降は、より短いスパンで施策を展開していきたいと考えています。
今後はお客さまのニーズの変化に合わせ、2〜3か月に一度のペースで情報発信やサービス提供を行うなど、柔軟にアップデートを重ねていく予定です。あわせて特典のラインナップ拡充にも力を入れていきたいと思っています。
そして、その点でギフティさんへの期待は、単に多様な交換先を提供していただくことに留まりません。ポイントやギフトを通じて、お客さまとどのようにコミュニケーションを取れば喜んでいただけるのか、どのタイミングで、どんな方法が最も効果的なのか──。そうした体験設計の知見やアドバイスをいただきながら、お客さまに“楽しんで使っていただける体験”を共に作り上げていければと考えています。

篠塚さん:ありがとうございます。
確かに、次のフェーズとしては、いかにお客さまの声を丁寧に拾い上げ、そこから改善の精度を高めていけるか、が鍵になると思います。その点、私たちはデジタルギフトをご発行いただく企業様、そしてキャンペーンなどでご利用いただく企業様の双方と密に連携しながら、ギフトのプラットフォームを形成しています。
このプラットフォームを運営する中で培ったノウハウ、そして我々が得意とする“ギフトを受け取って嬉しい”という体験設計の知見を活かして、今後も包括的なご支援させていただければ、と思います。











