

ブランドは人、そして“物”にも宿る——freee×paintoryが語る、Swagだからこそ伝えられるもの
「スモールビジネスを、世界の主役に。」をミッションに、中小企業や個人事業主向けのクラウド会計・バックオフィス支援サービスを提供しているフリー株式会社様(以下、freee)。
同社では「フリダシ」というショップでfreeeのロゴがあしらわれたTシャツなどを展開したりと“物”を通じたユニークなブランディングを実現しています。最近では公式キャラクター「Sweee(スイー)」が誕生し、Sweeeのぬいぐるみやパーカーなど、さまざまなアパレル・グッズも制作されています。
今回は、こうした“物”を通じてブランドを体現しているfreeeでブランドディレクター/プロデューサーをしている黒田さんと、アパレルをはじめとするSwag(※)を提供するpaintoryの佐瀬さんに、freeeが目指すブランディングのあり方とSwagの可能性について伺いました。
※ロゴや社名などをプリントした企業のオリジナルグッズ
※本施策は、ギフティのグループ会社であるpaintoryによる支援事例です。paintoryは、個人・法人問わず、誰もが小ロットから簡単にプライベートブランドを立ち上げられるカスタマイズウェアサービスを提供しています。

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ブランドは、人から生まれる
お二人のご所属や普段の業務内容を教えてください。
黒田さん:私はfreeeのCorporate Brandを担当しています。

freee Corporate Brandチーム 黒田愛美さん
佐瀬さん:私はpaintoryをはじめとするギフティのグループ会社のPMI(※)を担当しています。今回は、paintoryの事業開発担当として、freee様向けの企画をフロントでご提案させていただきました。
※Post Merger Integrationの略。M&Aの目的を達成し、経営・業務・意識などを統合して、シナジー効果を最大化するためのプロセスのこと

paintoryの佐瀬 醇さん(株式会社ギフティ PMI推進室)
黒田さんのお取り組みをもう少し詳しく教えてください。
黒田さん:ブランドチームの主な役割は、あらゆるタッチポイントで接する人にfreee“らしさ”を感じていただくことです。
では、その“らしさ”とは何かというと中小企業や個人事業主といったスモールビジネスに関わるすべてのお客様をはじめとした、あらゆる人に「経営はもっと“自由”になれる」と実感していただくことです。
そして、その「自由」を構成するキーワードが「解放」「自然体」「ちょっとした楽しさ」。これらをfreeeのブランドコアとして定義していて、プロダクトや営業資料など、あらゆる接点でこのブランドコアを軸にしたコミュニケーションを行っています。
たとえばDMを制作する際に「この表現のほうがちょっとした楽しさが伝わりそう」と、言葉選びやグラフィックのニュアンスを確認したり、プロジェクトの企画段階からチームに入って「ブランド体験としてどう表現するか」を一緒に考えたりしています。
黒田さん:一方で、ブランドは決してブランドチームだけがつくるものだとは考えていません。freeeは「ブランドは人から生まれる」という考えがあり、ブランディングは特定のチームの仕事ではなく、freeeで働く社員一人ひとりの立ち振る舞いや考え方が積み重なり、結果として「freee」というブランドを形づくっていくものだと思っています。
「堅さ」からの解放 Swagでブランドをもっと自由な印象に
社員全員がブランドの体現者になる、ということですね。ちなみに、paintoryでは企業のSwag制作を手がけていますが、Swagはブランディングにどのような効果をもたらすとお考えですか?
黒田さん:Swagはfreeeブランドにおいて非常に大きな役割を果たしていると思います。象徴的なのがfreeeのTシャツですね。たとえばお客様の元へ商談に行くときも、イベントなどで登壇をするときも、いわゆる形式ばった白シャツではなくfreeeのTシャツを着る。それは単に社員の一体感を示すだけでなく、「解放」や「自然体」といったブランドコアを直感的に感じていただく役割も果たしています。
佐瀬さん:もともと貴社は「透明書店(※)」という書店を子会社として運営して本を販売されていますし、「フリダシ」というショップではTシャツ以外のSwagも展開されていますよね。
※スモールビジネスを深く理解し、応援するために立ち上げた書店。「スモールビジネスに関わる人がちょっとした刺激がもらえる」をコンセプトに、新書だけではなく雑貨販売やイベント・シェア棚の運営などを行う

freeeの大崎ネスト(オフィスのこと。freeeではオフィスをネストと呼ぶ)内にある「フリダシ」。Tシャツやエプロン、ビーチサンダルなどさまざまなSwagや「確定申告すごろく」といった会計に関わる商品が並ぶ
佐瀬さん:さらに伺ったところでは、税理士のパートナー様やお客様に向け、営業担当の方がフリダシで販売されているSwagを手土産として活用されることも多いとか。そうした取り組みから、Swagを通じてブランディングに成功している企業という印象を強く受けています。
それで私も、Swagを通じて最近、freee様への印象が少し変わりました。正直、以前はもっと“クールな会社”というイメージを持っていました。でも、こうしたSwagやTシャツを通して「自由さ」や「楽しさ」を強く感じるようになりました。

黒田さん:それは嬉しいですね。ちなみに、なぜ“クールな会社”という印象を持たれていたのでしょう?
佐瀬さん:プロダクトが会計・バックオフィス支援サービスという性質上、会計や数字にまつわる“堅さ”のイメージが僕の中であったのだと思います。
黒田さん:なるほど。freeeは「バックオフィス業務のわずらわしい業務をもっとスムーズに、むしろちょっと楽しい行為にしたい」ということがあります。これは、多くのことは楽しいほうが生産性が高まる、と考えているからです。仕事にもちょっとした楽しさを見出せると、どんどん進めたくなる。多様なアイデアが生まれ、さらにクリエイティビティが発揮できる。そしてスモールビジネスの先にいるお客さまにも、その楽しさは広がっていく。Swagはまさに、その“堅さ”を解きほぐす重要なツールになっているかもしれません。ちなみに最近、キャラクター「Sweee」のSwagも人気です。
キャラクターのSwag、ですか?
黒田さん:はい。Sweeeは、freeeのシンボルである「ツバメ」をモチーフに生まれたキャラクターです。税理士や会計士のパートナーさんからもSweeeのSwagが好評なんです。中には、ご自身のオフィスの机をSweeeのグッズでいっぱいにしてくださっているユーザーさんもいらっしゃって(投稿はこちら)。キャラクターが自然に生活に溶け込んでいるのを実感しますね。
既存Swagも、paintoryの手でより日常使いしやすい形に
なるほど。直近実施された「健康経営Fes!」ではpaintoryも出展していましたよね。このイベントの内容とSwagとの関連性について教えてください。
黒田さん:「健康経営Fes!」は「健康経営に取り組みたいが、取り組めていないスモールビジネスが約半数にのぼる」という調査結果から、実際の事例に触れながら、健康経営を楽しく体感し、一歩を踏み出すきっかけをつくることを目的に開催しました。
黒田さん:今回はpaintoryさんにイベントの世界観やfreeeらしさを体現したSwagを制作いただきました。具体的には「健康」をテーマにしたアパレルやfreeeのロゴ、SweeeをあしらったTシャツ、パーカー、パンツ、キャップ、スタイ、サコッシュなど計22アイテムです。イベント当日には、paintoryさんが来場者の方々にECサイトを案内し、販売いただきました。

健康経営Fes!では、サンプルのみ展示(左)。購入を希望された方には、商品購入ページ(右)のリンクを案内し、オンラインで購入できるようにした(商品購入ページはこちら)
paintoryが制作したグッズは黒田さんも監修されたと伺いましたが、制作時に意識された点はありますか?
黒田さん:アパレルは“着るもの”なので、やはり普段着として着やすいことを意識しました。たとえば最初は全アイテムに「健康経営Fes!」のロゴを入れていたんですが、ロゴのままだとイベント感が強いなと。そこで「健康」という言葉だけにして、日常でも使いやすいデザインにしてもらいました。
印象に残っているグッズはありますか?
黒田さん:Sweeeのパーカーですね。これは以前、展示会用にスタッフ向けとしてほぼ同じデザインの物を制作したことがあったのですが、終了後も人気で、100着以上「自費で欲しい」という声があり追加生産したんです。その後もリクエストは続いていたんですが、都度対応すると在庫管理や工数面で実現が難しく、ある程度人数が集まったら……と思っていたところでした。
佐瀬さん:そうでしたね。そこで今回は“復刻版”として制作しました。前回モデルよりも日常使いしやすいよう、以前は背中に大きくロゴを入れていたところを、今回は腕にfreeeロゴを入れるなど、使用シーンを意識した調整を行いました。

Sweeeのパーカー。復刻版ではより普段使いしやすいよう、背面の大きなロゴをやめて腕にfreeeのロゴを配置している

「自由」の刺繍入りキャップ。刺繍は細かい文字が潰れやすいため「自由」の隙間がつぶれないよう何度も調整されたという。また、曲面への刺繍という点でもバランスを取るのに苦労したアイテムとのこと
改めて、paintoryのサービスを総括していかがでしたか?
黒田さん:受注生産なので在庫リスクがなく、初期費用がかからないのが大きなメリットでした。それでいて購入された方には3〜4営業日で届くので、販売者・購入者双方にとって満足度の高いサービスだと感じています。
また、完成に際して細部まで相談しながら制作できたこともありがたかったですね。刺繍のズレや些細な色味の調整といった細かい要望にも応えていただけたと思います。
さらに、機動力の高さも魅力です。これだけたくさんの種類のアイテムを作ろうとすると、通常は複数の製造会社さんとやり取りする必要がありますが、paintoryさんは一貫してサポートしてくださり、非常にスムーズに進行でき、ありがたかったです。
Swagには、“じわじわと効いてくる力”がある
今後、中長期的に描いているSwagの展望があれば、ぜひ教えてください。
黒田さん:個人的にはいわゆる企業グッズという枠を超えて、純粋に“好きだから着る”“かわいいから着る”という存在になれれば理想ですね。その服を着ているうちに「実はfreeeのアイテムだった」と気づくくらいの距離感も良いですね。
佐瀬さん:“おしゃれだな”と思って着ていたら、その服が実はfreeeだった、みたいな世界線ですよね。

I love SweeeのロングTシャツ。今回の「健康経営Fes!」をきっかけに制作されたアイテムの一つ
最後に「Swagに関心はあるけれど、何から始めたらよいかわからない」という方々に向けて、アドバイスをお願いします。
黒田さん:Swagには、ロジックだけでは測れない“感情的な価値”という面で、大きな力があると感じています。もちろん、パーパスやカルチャー、ブランドのコアを言語化し、それを社内外にしっかり届けていくことも非常に大切ですし、多くの企業がすでにそうした取り組みをされています。
ただ、それに加えて「言葉ではなく、感覚で伝わるもの」というのがSwagの本質的な価値なのかもしれないと感じています。たとえば「イベントTシャツを配って全員で着る」としたときに、最初は抵抗を感じる人もいるかもしれません。でも、それが気づけば皆が着るようになって一体感を生んでいた──そういうこともあるんじゃないかなと思います。
そうした何気ないきっかけの積み重ねが、freee“らしさ”を体現して、ひいてはブランドを形づくっていく……Swagには、そうした“じわじわと効いてくる力”があるのではないかと感じています。
佐瀬さん:ありがとうございます。おっしゃる通りですね。paintoryとしても、Swagを日常に自然と溶け込ませることを意識したご提案を日々行っています。たとえば、我々が支援させていただいているブランド様とコラボレーション(※)して、アメカジ風のデザインにしてみたり、ファッションとして毎日でも着たくなるようなデザインに仕上げるなど。こうしたアプローチを通じて、企業の皆さまのブランディング施策を後押しする存在でありたいと考えています。
そして、freee様は日本におけるSwagカルチャーを牽引されているリーダー企業の一つであり、その存在感は非常に大きいと感じています。そんなfreee様のSwag文化のさらなる浸透に向けて、私たちとしても引き続き全力でご支援させていただきます。
※paintoryでは、DtoCアパレルブランド向けのデザインや制作支援も行っている











